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野火(Wild Fire)――そして祝福された水

野火(Wild Fire)――そして祝福された水

『野火(のび)』と聞くと大岡昇平さんによる戦争文学の代表作を思い出しますが、今回ご紹介したいのはブラジルで「野火(Fogo Selvagem) 」と呼ばれている風土病のことです。

『野火』の意味ですが、これは春の初めに野原などの枯れ草を焼く火・野焼きの火のことです。野焼きというのは牧草などを再生させるため、固くて古い草を一度燃やして若い芽を出したり、焼き払って農地にしたりという目的で行われます。『野火』の舞台はフィリピンのレイテ島で、主人公の田村が行く先々で見かけた野火の光景と様々に追い詰められていく心象を重ね合わせています。

しかし、奇しくも大岡さんのこの小説の中にもおそらく同じ病と思われるものが「熱帯潰瘍(ねったいかいよう)」という名前で出てきているのです。少しだけ引用してみます。


――振り返ると顔馴染(かおなじみ)の安田という中年の病兵の、表情のない顔があった。熱帯潰瘍で片足が棍棒(こんぼう)のようにふれくれ上がっていた。向脛(むこうずね)にある一つの潰瘍は、塩煎餅(しおせんべい)の大きさに拡がり、まん中に飯粒ほどに骨が見えていた。彼はそこに比島人の療法に従って、刺戟性の匂いのする植物の葉をはり、上にブリキの小片をあてて、布で縛っていた。――



この「野火」というい病は現在では「ブルーリ潰瘍」(※リンク先はwikiペディアですが潰瘍の傷口の写真がありますので苦手な方はクリックをご遠慮ください)という名前で呼ばれています。潰瘍の病原体は、ちょっと長い名前ですが「マイコバクテリウム・ウルセランス」という細菌です。この細菌は、ハンセン病結核の原因菌と同じ仲間です。「ブルーリ」という名前は、アフリカ-ウガンダのブルーリ(Buruli)地区でこの病気が多く発症した事に由来します。

熱帯潰瘍の名前のとおり、暖かい国や地域の病で、よどんで汚れた水のある沼・池・川などの水域周辺に住む人がその水中の菌に接触し感染する場合が多いと言われております。また、蚊などを媒介して人に感染するという報告もあります。ただ、その全容については明らかにされてはいません。ブラジル現地の人に聞いたところ「田舎の病気だ」と言っていました。

小説にもあるように、水につかることが多い足あるいは腕に発症することが多いようです。発症の初期は虫に刺されたような紅斑ができます。その後、数日から数週間掛けて潰瘍になっていきます。皮膚が病に侵され、一点から始まり徐々に大きな輪になりながら、肉がこそげ取られるように無くなっていく様はまさに「野火」という比喩がぴったりです。

治療法ですが、2016年現在では、小さな潰瘍にはリハンプシンとステプトマイシンという抗生物質の併剤療法によってなされていますが、大きな潰瘍に対しては先の抗生物質を利用しつつ、皮膚移植をともなう病巣切除手術という方法しかありません。とても大きな手術で患者の経済的・体力的な負担は相当なものです。そして外科手術を行ったとしても障害が残る例が多数見られます。治療に当たっては早期発見が重要なことですが、ブラジルの田舎などでは知識を持っている人が少ないということもあり、重篤化するケースが多いようです。

前置きが長くなってしまいました。
ここからはカーサのスタッフのアンジェラさんに聞いた話をまとめました。

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数年前のこと、一人の女の子がブラジルの田舎から父親に付き添われてアバジャーニア村のカーサにやって来ました。その年に16歳になったその子は一人で歩くことができませんでした。

その女の子のひざから下の両足にずいぶん前にブルーリ潰瘍が出来ました。カーサに連れてこられたときはあろうことか、脛(すね)の骨がひざ下すぐから足首近くまで、はっきりと二本見て取れました。

女の子は回復室に運び込まれ、ベッドに寝かされました。父親の付き添いが許されました。

セッション時間になるとしばらくしてジョアンさんの肉体に入ったエンティティーが回復室に入ってきました。他に4、5人のスタッフがアシストで付きました。

エンティティーは女の子の様子を診るか診ないかのうちに、すぐさま「祝福された水」をペットボトルで持ってくるようにスタッフに言いました。

エンティティーは祝福された水を受け取るとベッドの側で付き添っていた父親にそのまま渡しました。

そしてそれを飲んでみるように言いました。

父親は未開封のペットボトルの栓をひねって開けると、一口ごくりと飲みました。

エンティティーは「どうですか」と聞きました。

父親はちょっといぶかしんで「いや、普通の水です」と応えました。

エンティティーは父親からその水をそのまま返して貰いました。それから女の子のほうに身体を向けました。

そして祝福された水をしらじらとした骨ののぞく二本の足それぞれにドブドブとかけ始めました。

かけた途端、すごい量の水蒸気が上がり始めました。まるで女の子の足がサウナの焼けた石で、そこに水を浴びせたかのようにです。

狭い回復室は蒸気でいっぱいで一瞬、皆の視界がぼやけました。

やがて蒸気は消えていきました。

しかし、次の瞬間、女の子のベッドの真上、天井付近にさっき消えたはずの蒸気がまた雲のように現れたのでした。

そしてその蒸気は――命あるもののように降りてきました。

ゆっくり女の子の潰瘍部分にまとわりつきました。それから患部がそれを欲しているかのように表面からスルスルと吸い込まれていきました。

アンジェラさんは目を疑いました。あのモクモクと発生した蒸気はなんなのでしょうか。あのペットボトルに入っていたのは間違いなく水でした。そして消えたはずの蒸気がもう一度、空中に現れるなどということがあるのでしょうか。

いま起こったことを受け入れられないまま、女の子の足を凝視していました。蒸気はもうどこにもありません。するととさっきまで見えていた黄色みを帯びた白い骨が――ピンク色になっていました。肉の膜がうっすらと骨を覆っているのです。

奇蹟を見慣れているはずのスタッフが皆しびれたように動きませんでした。

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女の子はたくさんの祝福された水を貰って家に帰りました。それからカーサには1、2ヶ月おきに3回ほど通いました。

そして3回目の治療が終わった頃には「普通の足」になったとのことでした。



祝福された水についてですが、エンティティーが祝福された水をこの場合どのように使ったのか、現行科学の狭いパラダイムの中で生きている我々には想像も尽きません。ただ、ジョン・オブ・ゴッドが海外でセッションを行う際、ハーブの処方が出来ない場合には祝福された水にクライアント独自の処方がされ、一回50㎖というような定量を飲むことを指示されます。そういう意味でこの祝福された水は、一般の祝福された水とは違うのかもしれません。

そしてエンティティーは、彼らとつながりをもった人々にはあらゆる面での接触をしサポートがありますので、普段飲んでいる祝福された水にもおそらく当人がいま必要としている効能を込めているのかもしれません。


野火(Wild Fire)――そして祝福された水(了)