朝顔の咲きそめる夏――山下さんのこと。(4)
視えないチャクラ
そして山下さんに初めてお目に掛かったのは、アバジャーニア村のポウザアダ(宿)においてでした。ツアーの予定は二週間と三週間だったので、山下さんを含めツアーメンバーのうち3人だけは一週遅れで参加することになっていました。そしてなぜか航空会社の都合で予定の便が飛ばなくなり、到着は一日遅れの火曜日午前中となりました。
カーザ専属タクシーから降りてきた、現在45歳の山下さんは背が高く、体の大きな人でした。髪をすべて剃った坊主頭、いかつい感じ、笑顔のように見えましたが、なにか強ばっているような表情で若干怖い印象がありました。
荷物を各々の部屋にいったん置いてもらうと、私もタクシーに乗り込み、全員でカーザまで行きました。ちょうどジョアンさんが入院した時期だったのでそのことをタクシーの中で説明しました。カーザに着いて、一通り案内したあと、祝福された水を買ってポウザアダに戻りました。
皆さんお疲れだったので、昼食まではお部屋で休んでもらうことに。
やがて昼どきとなり、ツアーメンバー全員が食堂に集まってきました。
アバジャーニアに滞在している間は食事も大切な要素です。なぜなら、日本と同じカロリー量の食事をしていると次第に痩せていくからです。これはおそらくカーザ・アバジャーニア村の周波数に我々の肉体が馴染んでいくプロセスでエネルギーをたくさん消費するためだと私は考えています。
以前お連れした方で日本にいたら甘い物など決して召し上がらない方がツアー日程の最後のほうには、ものすごく甘いチョコレートケーキを「身体が欲しているので食べます」といってけっこうな量を召し上がっておられました。ですので「ダイエットになってうれしい」などといわずに、ぜひ、アバジャーニアにいる間は食べることもヒーリングだと思って、食べたいものを食べたいだけ摂られることをお奨めします。
当然、ポウザアダ選びでは毎日美味しく食事ができることがとても重要です。私は日本人の口に合う食事(しょっぱくないこと、油っぽくないこと、魚あり・肉少なめ)を出してくれるところをいつも選ぶようにしています。今回泊まったポウザアダも一手間掛けた野菜料理を中心としたブラジル料理で、バイキング形式になっています。
山下さんはブラジル料理にも、この形式にもまだ慣れておられない様子で、味見のようにお皿に少しだけ持ってきて召し上がっています。
私は遠くから少しだけ意識をずらして、イスに座った山下さんのオーラとチャクラを拝見させていただきました。
――チャクラが視えない――そう思えました。
こうしたことはたまにあります。気持ちが焦っていたり、なにか感情が揺れるようなことがあると、視えなくなります。「いま・ここ」という感覚と、そこにいる対象だけではない「生きとし生けるものすべてに対する愛」の感覚が強く出てこないと視えません。
でもいまはそんな感じではなかったので不思議に思いました。
山下さんの「オーラ」は視えていました。ただ、それも体表にまとわりつくような、厚みのない感じで、色もはっきりしません。
ジロジロ見て失礼にならないように、頃合いをみてもういちど拝見しました――視えません。けげんに思い、他の人を見ると、他の人のチャクラは視えました。なぜか山下さんのだけが視えないのです。
このときはこれで終わりました。
(5)へつづく