我妻さんブラジルへ(3) 緊急入院編
我妻(あがつま)さんの次の病院での検査は5月8日でした。
しかし、結果は想像以上に悪いものでした。この抗ガン剤も使用できないほどに総ビリルビン値が高くなっていました。
「ビリルビン」というのは古くなった赤血球が破壊されるときに生成される黄色い色素のことで、肝臓・胆嚢に関する病を患っている方の皮膚や眼球のしろ目の部分などが黄色くなるもので、一般に「黄疸(おうだん)が出た」というのを聞いたことがある方は多いと思います。ビリルビンは本来、肝臓で処理され、血液中に残るのはわずかなのですが、肝臓の処理機能が衰えると、この値は上がります。正常値は0.2~1.2mg/dLあたりですが、この時点で、我妻さんの数値はすでに「6」までになっておりました。
これは一体どうしたことでしょうか。私自身は『リコネクティブヒーリング』においても、『リコネクション』においても普段になくエネルギーがたくさん流れた実感もあり、我妻さんのヒーリング後の感想も頭にありました。そしてこれまでに、施術後、病気が進行した例を私は知らず、私自身もちょっとしたショックを受けていました。
しかし、私がこの事態をどう感じているかなどということは、ちっぽけな信念の問題なので、この際どうでもよいでしょう。一番驚き、落胆したのは我妻さん自身だったと思います。主治医の今年4月の見立ても大きく外れて、我妻さんの肝臓は急激に悪化しているようでした。
それでも、我妻さんのカーサに行くという決意は固く、主治医の勧めで「アービタックス(Cetuximab)」という、いまの状態でも投与可能な別の抗ガン剤を5月8日に一度試してみました。さらに次の日、主治医から電話があり、「一週ごとにビリルビン値が倍増している状況を勘案すると来週はアービタックスでさえも投与は難しいかもしれない」との話です。そこで相談した結果、『胆道ドレナージ』という手術を選択しました。選択というか、ブラジルに行くためにはこれを行うしかありませんでした。これは「減黄(げんおう)処置」と呼ばれ、うっ帯した胆汁が肝臓に行く前に消化管内(たとえば十二指腸などに)に流れるようにするもので、胆嚢、胆道、肝胆道等へチューブを挿入し、消化管までのバイパスをつくる作業です。
我妻さんはとりあえずの準備だけ済ませると慌ただしく入院することになりました。
入院は5月14日午後に決まりました。そして「遅くとも25日午前中には、なにがあっても退院する」と主治医に宣言したのでした。
つづく